• my Guru-s

    先生紹介

    Guru Ammannur Madhava Chakyar

    Guru Ammannur Madhava Chakyar

    グル アマヌール・マーダヴァ・チャーキヤール

    クーリヤッタム、ナンギャールクートゥ

    現代クーリヤッタム界を象徴する偉大な俳優。
    1917年5月13日ケーララ中部イリンジャラクダのアマヌール・チャーキャール・マダムで生まれ、2008年7月1日夜、9時15分永眠。享年91。
    アマヌール・チャチュ・チャーキャール、およびアマヌール・ワリヤ・マーダヴァ・チャーキャール、キタングール・ラーマ・チャーキャールのもとでクーリヤッタムを学ぶ。
    コドゥンガルール王宮のバーガヴァタール・クンニュンニ・タンプランにナティヤシャーストラと演技の奥義を習う。
    クーリヤッタムを代々伝承するアマヌール家の家元的存在であった。またクーリヤッタム演者の養成機関「アマヌール・チャーチュ・チャーキャール・スマーラカ・グルクラム」の最高顧問として、亡くなるまで若手育成に努めた。
    主な受賞歴
    1982 インド政府よりパドマシュリー
    1996 サンギート・ナタク・アカデミーのフェローシップ
    2002 インド政府よりパドマブーシャン

     

    Guru Ammannur Madhava Chakyar

    born in 13 May 1917 at Ammannur Chakyar Madhom Irinjalakuda. His father is Vellarappilli Matassi Manakkal Parameswaran nambuthiri and Sreedevi Illodamma. His Gurus are Ammannur Chachu Chakyar and Ammannur Valiya madhava Chakyar. His debut at the age of 11 at Thirumandhamkunnu Bhagavathy Temple near Perinthalmanna in Malapuram District. He learned Sanskrit from idushi Kochikkuvu Tampuratti and Vidvan Manthitta Namputhiri. He also learned Natyasastra and Abhinaya from Bhagavatar Kunjunni Tampuran , Kodungallur Palace.

     

    Awards
    Padmasree in 1981
    Sangeet Natak Akademi fellowship 1996
    Citation of UNESCO recognition of Kutiyattam in 2001
    Degree of Doctor of Letters form University of Kannur, Kerala 2002Padmabhooshan in 2002
    Kerala State 'Nrutha Natya Puraskaram 2007

     

    外部サイトで見る

    Ammannur Kuttan Chakyar  photo by Hitoshi Furuya

    Guru Ammannur Kuttan Chakyar

    アマヌール・クッタン・チャーキヤール

    (Ammannur Parameswaran

    アマヌール・パラメーシュワラン)

    クーリヤッタム、ナンギャールクートゥ

    「アマヌール・チャーチュ・チャーキャール・スマーラカ・グルクラム」総裁。

    クーリヤッタムを代々伝承するアマヌール家の主要な俳優のひとり。アマヌール・マーダヴァ・チャーキヤールの甥にあたる。
    サンスクリット語に精通し、ラーヴァナ、バーリなどのクーリヤッタムの主要な役を演じるほか、チャーキヤールクートゥやヴィドゥーシャカの役など、現地の言葉(マラヤーラム語)でコミカルに語る役柄も得意。

     

    外部サイトで見る

    G.Venu

    G.Venu

    ジー・ヴェーヌ

    クーリヤッタム、演技の基礎、演出

    11歳より舞踊劇カタカリの演技法を学び、その後、ケーララのさまざまな伝統芸能を調査するとともに自ら習得し、1975年「ナタナカイラリ研究所」を設立した。以来、クーリヤッタムをはじめ伝統芸能の振興に積極的に取り組み、実践を踏まえた数多くの著作も発表している。

    海外公演やワークショップの経験も豊富で、近年はスウェーデンの演出家P.オスカーソンが提唱する世界演劇プロジェクトにおけるヨーロッパ、中国、モザンビークの劇団との協同制作など、伝統の活性化に努め、優れた見識は内外の高い評価を受けている。
    クーリヤッタムにおいては自身、マーダヴァ・チャーキャールおよびパラメーシュワラ・チャーキャールの両師に教えを受けた優れた演者であり、若手の演者養成など伝承存続に努め、新作の演出、発表も行ってきた。

    近年では、演技メソッドを研究しナヴァラササーダナとして現代演劇の俳優たちの教育にも力を入れている。

    2007年日経アジア賞文化部門受賞

    Published worksAlphabet of Gestures in Kathakali (1968)
    Kathakaliyile Kaimudrakal (1977)
    Mohiniyattam - The Lasya Dance (1983,1995) (co-authored by Nirmala Paniker)
    Mudras in Kathakali (1984)
    Production if a play in Kutiyattam (1989)
    Puppetry and Lesser Known Dance Tradition of Kerala (1990)
    Tolpavakoothu - Shadow Puppets of Kerala (1990)
    Kathakalimudra Nighantu (1994)
    The Language of Kathakali (2000)
    Ammannur Madhava Chakyar:Ente Kutiyattam Smaranakaliloote (2002)
    Into the world of Kutiyattam with the Legendary Ammannur Madhava Chakyar (2002)
    Kathakali Kutiyattam and other Performing Arts (2005)

    Ramayana Samkshepam
    An Attaprakram (Acting Manual) for depicting the story of Ramayana through mudras in Kutiyattam Theatre(2014)

    Nirmala Panicer in class room

    Guru Nirimala Panicer

    ニルマラ・パニッカル

    古典舞踊モヒニヤッタム

    南インド古典舞踊モヒニヤッタム舞踊家、振付家、教育家。
    グル・カリヤーニクッティアンマに師事。子供時代からケーララの民俗芸能や儀礼、武術などに触れる機会に恵まれて育つ。南インド古典舞踊バラタナティヤムを学んだ後、ケーララの古典舞踊モヒニヤッタムを始める。
    ケーララ地方とタミル地方における女性舞踊の歴史や伝承に関心を持ち、タミル古典文学「チラパティカーラム」の研究など、南インドの舞踊の伝統の研究にも取り組んでいる。
    失われてしまった舞踊の技法や演目、なかでもケーララ固有の要素の研究・復興に情熱を注ぎ、それらを再構成した演目を創作・上演し、振付家としても高く評価されている。
    近年は、ケーララの女性舞踊と演劇の伝承の研究、および舞踊公演を行なう研究教育機関「ナタナカイシキ」を設立、自ら後進の指導にあたっている。夫であり、共同研究者であるG.ヴェーヌ氏と協力しながら、常に純粋かつ精力的に活動を行っている。
    モヒニヤッタムのムドラについての著作「Hand Gestures of Hasthalakshanadeepika in Mohiniyattam」など著書多数。

     

    disciple of guru Kalyani Kutty Amma, is a dancer and choreographer. As a research scholar, she has investigated the links between the dance forms practiced by the women of ancient Kerala and Tamil Nadu. Her main contribution consists in the revitalisation of those Mohiniyattam techniques that had largely been overlooked in the recent repertoire, most notably its desi or regional aspect. The features shared by Mohiniyattam, Nangiyar Koothu and Thiruvathira Kali and the dances described in the Tamil epic poem Cilapadikaram are of special interest to her.Initiated into the rich heritage of the Kerala arts through her childhood experiences where she witnessed several folk,ritual and martial arts the seed of inquiry sprouted in Nirmala's mind.Trained first in Bharatnatyam and then in Mohiniyattam she undertook research to rewrite the forgotten chapters of the Mohiniyattam technique and repertoire.She sought to find a common link between Mohiniyattam, Nangiar Koothu and Thiruvatirakali. The outcome of Nirmala's current study of Chilappatikaram, a Tamil epic by Ilangovan is poised to uncover a vast mine of untapped information co-relating dance practices in ancient India.Currently Nirmala Paniker has established Natanakaisiki - A Research and Performing Centre for the Female Dance and Theatre Traditions of Kerala (A Special Wing of Natana Kairali).Nirmala Paniker is storngly supported by her husband G. Venu (author of several books on Indian Performing Arts and Founder)

    Usha Nangiar with Guru Ammannur Madhava Chalyar

    Usha Nangiar

    ウシャ・ナンギャール

    クーリヤッタム、ナンギャールクートゥ

    ミラーヴ奏者である父、故チャタクダム・クリシュナン・ナンビアールと、母クマーラナッルール・エールママタム・サラスワティ・ナンギャールの間に生まれた。

    ウシャ・ナンギャールは、アマヌール・チャーチュ・チャーキャール・スマラカ・グルクラムで、女性として最初にアマヌール・マーダヴァ・チャーキャールの弟子となった。17年間学び、アマヌール・マーダヴァ・チャーキャールおよびアマヌール・クッタン・チャーキャールの下で厳しい訓練を受けた。

    そして、アマヌール・グルクラムで、後進の指導を7年間行なった。

    また、バンガロールのアッタカラリとポンディシェリのアーディシャクティで短期コースを担当した。

    現在、ケーララ中部のカーラディにあるシュリーシャンカラアーチャリヤ・サンスクリット大学の演劇学科の教員を勤める。

    ウシャ・ナンギャールは、クーリヤッタムのワークショップを数多く行っており、国内および国際的な多くのセミナーや会議で論文を発表している。

    これまで「デーヴィマハートミヤム」、「ドラウパティ」、「マンドーダリ」、「スバドラ」、「カルティヤーヤニ」、「アハリャ」などを登場人物とした演技用台本を構成して書き下ろし、上演を行なってきた。それらの台本をまとめて書籍化した「Abhinethri」を出版。

    クーリヤッタムとナンギャールクートゥの新しい可能性を開拓し、この芸能の発展に多大な貢献をしている。ケーララ州チャタクダムのクリシュナン・ナンビアール・ミラーヴカラリで、ナンギャールクートゥの指導を行っている。

     

    USHA NANGIAR

    Daughter of the late Mizhavu maestro Chathakkudam Krishnan Nambiar and Kumaranellur Ezhumamatom Saraswathy Nangiār, Usha Nangiar was the first female disciple of Ammannur Mādhava Cākyār at the Ammannur Cācu Cākyār Smaraka Gurakulam. She continued there for seventeen years and received rigorous training under Ammannur Mādhava Cākyār and Ammannur Kuttan Cākyār.

    Usha taught at Ammannur Gurakulam for seven years. She had also taught for short term courses at Attakkalari, Bangalore and Adisakthi, Pondicheri. Presently she is working as a member of the teaching faculty in the Department of Theatre at Sree Sankaracharya Sanskrit University, Kalady.

    Usha Nangiar had presented papers in many national and international Seminars and Conferences besides organizing a number of Kūțiyāțtam Workshops. She has contributed a lot towards the modification and development of Kūțiyāttam and Nannyārkkūttu, her main contributions being the composition of the acting manuals and the presentation of ‘Devimāhātmyam’and characters like Draupadi, Mandodari, Subhadra, Kārtyāyani and Ahalya on stage.

     

    from Abhinetri p265

    P.Nandakumar on Idakka,photo by Takahiro Kohara

    P.Nandakumar

    P.ナンダクマール

    イダッキャ、ムリダンガム

    南インド、ケーララ州のパーカッション、イダッキャ奏者。音楽一家に生まれ、幼い頃から伝統的な音楽や寺院の儀式に慣れ親しんで育つ。10歳よりイダッキャを始め、祖父、父に師事。その一方で打楽器ムリダンガムにも興味を持ち、名高い奏者の指導を十数年に渡り受けており、イダッキャ、ムリダンガムそれぞれの音楽やリズムの特徴を相互に活かす演奏スタイルを確立した。
    1997年には、29日間連続して演奏を続けるNILAA SADHAKAM(ニラー サダカム)を完遂。また、この楽器の奏者として初めてインド国営放送芸術家A級に選ばれた。ヨーロッパ、アジア各国に招かれ演奏するなど意欲的な音楽活動を続けている。ケーララ州の伝統文化を促進する目的で、TUDIを立ち上げ、同分野の次世代育成にも長年に渡って尽力している。
     
    〈イダッキャの師〉
    故クンニュ ポドゥヴァル氏(祖父)
    故クリシュナンクッティ マーラール氏(父)
    パッラヴール アップ マーラール氏
     
    〈ムリダンガムの師〉
    G. チャンドラシェーカラン氏
    パールガート T.R. ラージャーマニ氏
    (ムリダンガム・マエストロ、パールガート T.S.マニ アイヤール氏の息子)
     

     

  • profile

    入野智江ターラ

    〜インド古典劇演者/南インドのパーカッション奏者/NPO法人JML音楽研究所講師/東京楽竹団

    東京生まれ。作曲家であった父、音楽教育家の母のもとで、幼少より音楽に親しむ。

    劇団横浜ボートシアター、バンブーオーケストラ・ジャパンでの活動など経て、2008年東京楽竹団の設立に参加、現在メンバーとして竹楽器を使った音楽活動を行っている。
    南インド古典音楽の主要打楽器ムリダンガムを S.クリシュナ氏に、ケーララの打楽器イダッキャをP.ナンダクマール氏に師事。日本では数少ない南インドの打楽器の演奏家でもある。
    野火杏子氏に南インド舞踊の手ほどきを受けた後、1994年より南インド・ケーララ州をたびたび訪れ、グル・アマヌール・マーダヴァ・チャーキャールのもとでサンスクリット古典劇ナンギャールクートゥおよびクーリヤッタムを習う。
    1996年1月にイリンジャラクダにおいてナンギャールクートゥの初舞台。2005年8月のクーリヤッタム来日公演では「シャクンタラ−」に女優役として出演。日本で唯一の演者として公演やワークショップなどを行っている。伴奏打楽器ミラーヴの演奏と普及にも力を入れている。

    ケーララの女性舞踊モヒニヤッタムをニルマラ・パニッカル氏に師事。

    ケーララのフォークダンス「ティルワーティラカリ」のグループ「プラクルティ」を率いて、ニルマラ・パニッカル氏の振付を指導している。

     

    2000年よりスワミ・ハリオームアーナンダのもとでハタヨーガを学び、また2003年よりカリカットのヒンドゥスタンカラリで南インド古武術カラリパヤットゥを学ぶ。

    2010年6月イリンジャラクダにてイダッキャのデビューコンサートを行う。

    2022年ニホンカイラリの"Keraleeyam Award"受賞。

    TOMOE TARA IRINO

    Kutiyattam Artist/South Indian Percussion player/NPO JML Yoshiro Irino Institute of Music Lecturer/Tokyo Rakutakedan Member

    TOMOE TARA IRINO was born in Tokyo, Japan. Her father YOSHIRO IRINO was a famous music composer who died in 1980. Her mother REIKO also working on music.

    Tomoe joined "Yokohama Boat Theatre"(Japan) as a musician and also an actress in 1986, and participated in several international art festivals with this theatre group (Edinburgh 1989, New York 1991, Hong Kong 1994, Singapore 1997, Romania 2003).

    She is a member of "Tokyo Rakutakedan", a music group that uses both original bamboo instruments and traditional Japanese bamboo flutes since the group was established in 2008. she has many performances with this group throughout Japan and abroad.

    Since 1994, she has studied Nangiarkoothu and Kutiyattam (Sanskrit classical theatre) in Irinjalakuda, Kerala as a student of NatanaKairali and Ammannur Chachu Chakyar smaraka gurukulam under Padmabhushan Guru Ammannur Madhava Chakyar, Sri Venu G., Sri Ammannur Kuttan Chakyar, and Smt. Usha Nangiar. She finished her arangettam (the first performance) of Nangiarkoothu in January 1996. She performs Nangiarkoothu in Japan as well as Kerala.

    She studies Mizhavu (the accompanying drum for Kutiyattam) at NatanaKairali from Sri Kalamandalam Rajeev, Sri Kalamandalam Hariharan, and Sri Kalamandalam Narayanan Nambiar.

    She also studies Idakka from Sri P. Nandakumar in Irinjalakuda, and performed her arangettam (first concert) on Idakka in June 2010.

     

    She studies Mridangam from Sri Sheejit Krishna in Chennai.

    She learns Mohiniyattam from Smt. Nirmala Paniker.

    She practices Kalaripayattu in Hindustan Kalari in Kozhikode.

     

    She established AbhinayaLabo in Tokyo and is giving opportunities to experience the tradition of South Indian Art Forms for people in Japan.

    She also leads a Thiruvathirakali dance team"Prakrti", and performs on the stage in Namaste India etc.

     

    She received the "Keraleeyam Award" from NihonKairali in 2022

  • Mudra

    過去のブログから ムドラについて

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    ムドラ

    2011/03/23

    ムドラというのは、サンスクリット語で印という意味である。印といっても、手印のことを言うことが多いと思う。身近なところでは、仏像の手の形などがムドラである。
     

    この形は「太陽」という意味のムドラの最終形。

    サンスクリット語で太陽は「スーリヤ」という。
    ヒンドゥの太陽神には、その他にもいろいろな呼び名がある。
    その中でも好きなものは、友人という意味の「ミトゥラ」


    このブログでは、南インドの古典劇において、言葉を表すために使われるムドラ(手印)に関係する話題を紡いでみたいと思っている。
    いろいろな手の形を使って言葉を表すということは、その言葉の持つ見えない力を呼び出すようなものだ。

     

    ムドラという言葉にはまた、喜びを生み出すもの、という意味もあるらしい。

    いま、このような試練のとき、見えない力の大きさをつくづく感じる、こんなときに、
    すこしでも喜びを生み出すために何をすればいいのだろうか。

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    結婚式の慣し

    2011/09/10

    カピラの結婚式の時の写真

    このように、新郎と新婦が手をつないでランプの炎の周りを3周する、というのが昔ながらのヒンドゥの結婚式の慣しである。

    クーリヤッタムでも、「結婚する」というムドラは、左手を五本の指先をつけた状態にし、それを右手の人差し指と親指で握る、という仕草で表す。

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    月例ムドラ研究会「木」

    2011/11/17-19

    昨日は、毎月行っているムドラの研究会の日だった。

    今回のテーマは前回に引き続き「木」

    道を歩いていて、あるいは林の中で、
    木に注目することがあるとしたら、どうやって見るだろうか?

    何かを見るとき、まずどこに目がいくか?
    たとえば、
    人を見る時であれば、だいたい最初に顔に目がいく。
    木の場合はどうだろう?

    何を見るか?どうやって見るか?によって、同じムドラでも表わすものに違いが表れる。
    そして、見方をちょっと試してみるだけでも、それは意外と実感できるものである。

     

    クーリヤッタムのムドラで「木」を表わす時には、下から上に見上げていく。
    こうすると、木がのびていく生命力を感じることができる、気がする。

    木を見るとき、他に何が見えるだろうか

    枝・・・
    クーリヤッタムの「枝」は、ちょっとわかりづらい。
    ひらひらもしているし、噴水の様でもある。
    葉っぱがたくさんついた枝の様子なのだろうか?
    ケーララは植生が熱帯だから、生えている木は日本とは違う。
    ということは、私たち日本人の思い描く枝とはちょっと違うのかもしれない。

    ムドラの形に具体的なもののイメージを求めると、ときどきわからなくなることがある。
    考えない方がいい時もあるが、気になるものである。

     

    木は、いろいろなものからできている。

    それは、たとえば
    若葉、葉、つぼみ、花、実

    ムドラを練習するとき、かならず、それらのイメージを思い描き、それらをリアルに見るようにする。
    実際にはそこにないものだけれど、見る。

    そこに見えれば
    それは、そこにあるのと同じこと。

    そして、
    ムドラでそれを表わすとき、小さな手の形が、いきいきと物を語りはじめる。


    ないものを見るって楽しい

    ムドラ研究会

    2012/02/07

    今日は月に一度のムドラ研究会の日

    最近この会では、マラヤーラム語で“ヴルクシャ ワルナナ”という一連の表現を少しづつ勉強している。

    ヴルクシャは木、ワルナナは描写といった意味だと思う。
    つまり、森や庭の木の様子を描写する場面である。

     

    この場面は足運びも多い。
    クーリヤッタムにおいてムドラは、手の形で言葉や概念を表すものだが、下半身もとても大事である。
    膝を曲げて、腰を落とした姿勢をとった上で、手でムドラを形作ると、表現が生き生きとしてくる。

    これは単純明快で、素晴らしい知恵である。

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    公演写真のムドラあれこれ「見る」

    2013/02/28

    具体的でわかりやすいムドラのひとつ「見る」
    目の横で一度手を握るようにしてから、二本指を開くのが、クーリヤッタムらしい仕草だ。

    写真は、2013年1月にケーララ州・ラッキディにあるマーニ・マーダヴァ・チャーキヤール・グルクラムにてナンギャールクートゥを演じるウシャ・ナンギャール

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    ムドラあれこれ「蓮の花」

    2013/03/08

    蓮の花を表すムドラ。
    蓮の花は日本でも特別な花だが、それはインドから仏教と共に伝わったのか、それとももっと古いのだろうか?

    濁った水の中に育ち、美しい花を開くことから、汚れることのない真の美しさを表しているとも言われる。
    どんなものも、その内側には真実の美しさを内包していることを表しているのかもしれない。

    ヒンドゥーの神へ捧げる儀礼に使われることも多い。
    イリンジャラクダのクーダルマニッキャムの神様は首に大きな蓮の花の花輪をかけている姿である。この寺院で供養に使われる花は3種類に限られているが、蓮の花はその一つで、毎日たくさん使われている。


    蓮の花のもう一つの特徴は花びらの数が多いこと。

    人間には身体の各部にチャクラと呼ばれるエネルギーポイントのようなものがあり、
    それぞれに蓮の花が対応しているそうだ。
    ヨーガなどで、ある段階に達すると、頭頂部に千枚の花びらを持つ蓮の花が開花し、そこからアムリタ(甘露)が流れ落ちてくる,などと言われる。
    先人達は、それをどのように感知したのだろう?
    想像をふくらますと愉しい。


    クーリヤッタムにおいては
    まず、右と左の手の平を合わせて少し膨らませた、つぼみの形からはじめることが多い。
    右側のエネルギーと左側のエネルギーが出会って調和している形である
    そして、指先から花開く。

    ちなみに、日本では水面から茎が伸びて、高い位置で花開くのを良くみるけれど、インドの蓮は多分種類が違い、熱帯性で花が水面すれすれに咲く。
     
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    ムドラあれこれ「シヴァ神」

    2013/11/07

    神様すべてに固有のムドラがあるわけではないが、いくつかには固有のものがある

    シヴァ神のムドラは
    右手は槍先、左手は動物を表す形
    槍先はシヴァの持つ三叉の戟を表しているらしい
    動物は、シヴァの乗り物の牛か
    あるいは、シヴァは鹿を持っているとも言われている

    ちなみに、神々は色々な別名を持つが、クーリヤッタムの台本でシヴァは、パラメーシュワラ(=最高神)と呼ばれることが多い
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    ムドラあれこれ「ヴィシュヌ神」あるいは「クリシュナ」

    2014/01/23

    女性のひとり芝居である「ナンギャールクートゥ」では、伝統的にクリシュナの物語を演じてきた

    クリシュナは笛の名手で、彼が吹く笛が聞こえてくると、人間も動物たちも、うっとりとしてしまう

    というわけで
    インドの舞踊でクリシュナが登場する時は、横笛を吹く形で表されることが多いけれども、ナンギャールクートゥでは違う

     

    写真のような形で表わす
    これはヴィシュヌ神を表すムドラでもある

    クリシュナはヴィシュヌ神の化身であるが、
    生まれて間もない赤ちゃんクリシュナも
    青年クリシュナも
    ヴィシュヌ神も
    みな、同じ形で表され

    クリシュナは、ある時を境に笛を手放したとされていて、ナンギャールクートゥではその後のエピソードも出てくるので、笛を吹く形を使わないのかもしれない

  • NavaRasa

    過去のブログから 演じることについて

    自分の中の演じるもの

    2012/03/18

    Venuさんが、ワークショップの中で語った言葉の中から、いくつか取り上げてみようと思う

    人の言葉を正確に伝えることはできないが、できるだけその心を理解しようと努力したい
     

    「演技するということは、個人としての自分が演じることではなく、

    自分の中の「演技者」が役の性質やその感情(bhava)を表していくことである。

     演技者は器であり、そこに感情が注ぎ込まれる。

     演技者はそれを外に見える形に表現する」

    ワークショップの時、
    注ぎ込むのは誰か?
    という質問があった
    それは個人である自分だろうか?

    多分
    「注がれる」という行為が大切であり、流れの中で的確な場所と的確な瞬間に身を置き、それを受け止めて注がれる、ということではないだろうか

    方位の神々

    2013/02/24

    インド古典劇のクラスで
    ナンギャールクートゥの「プラッパードゥ」
    という演目を練習しています。

    この演目は
    連続してナンギャールクートゥを上演する場合に初日に上演されるものです。
    物語の導入とともに、
    いくつかの純粋に舞踊的な部分や、
    神々への賛美などで構成されています。

    その中に
    八つの方位の神、それぞれに

    「花を捧げ

      舞踊を舞って

       祈りを捧げる」

    という部分があります。

    この八方位の神々はヒンドゥーの思想に基づいていますが、日本でも十二天として方位の守護神とされています。

    インドラ = 帝釈天
    東南 アグニ = 火天
    ヤマ= 閻魔天
    南西 二リルティ= 羅刹天
    西 ワルナ= 水天
    北西 ワーユ = 風天
    クベーラ= 毘沙門天
    北東 パラメーシュワラ = 伊舎那天

    インドからそのままの形で伝わって来ているんだな、と思うと何とも感慨深いものです。

    インドラは神々の長
    アグニは日本名の如く火の神
    ヤマは鉄の杵を持った死の神
    二リルティは羅刹神
    ワルナは海の神
    ワーユは風の神
    クベーラは富の神
    パラメーシュワラはシヴァ神の別称
    です。

    岡田正子氏による演技ワークショップを受けて

    2016/06/01

    岡田正子氏によるベラ・レーヌの演技レッスン
    以前から気になっていたが、5月に両国のギャラリーXで行われた三日間のワークショップの初日だけに参加させていただいた

    クーリヤッタムの演技と通じるものを感じたので、少し考えをまとめてみようと思う

    この日の課目は
    1.心の中のセリフ
    2.レセプシオン
    3.二義的動作

    「心の中のセリフ」というのは、台本からセリフを取ってしまってもお芝居が成立するように、心の中を充実させること

    「セリフがなくても充分その場の状況が演じられるようになった時、はじめてチェーホフの宝石のようなセリフが全部生きてくる。」とベラ・レーヌさんはよく仰っていたそうだ

    クーリヤッタムでは、台本の言葉を一語一語ムドラを使って表していく
    例えば、「蓮の花を見た」という文を表す場合は「蓮の花」と「見る」というムドラを順々に表わす
    「蓮の花」のムドラは
    胸の前で両手を合わせてつぼみの形を作り、少しずつ指を開いて花の形を作る
    その時、手で作った花の辺りに蓮の花をイメージし、花びらを一枚一枚目で追うようにする
    そして、心の中にその蓮の花のイメージを確立させて正面を見る

    次に「見る」
    両手を軽く握って、左右の目の横にもっていき、人差し指と中指を伸ばしてチョキの形にする、と同時に目を見開き、蓮の花を見る
    この時、どこに、どんな蓮の花が咲いているかがはっきりしていないと、漠然とした目線になってしまう

    言葉をムドラで表すためには、言葉が表している情景などを具体的に思い描くことがとても大事だ

    これは「心の中のセリフ」でやっていることと近いように感じた


    クーリヤッタムには基となる戯曲があって、それとは別に上演のための台本がある
    戯曲はサンスクリット語で書かれた古い文学作品だが、クーリヤッタムではその戯曲に書かれているセリフをそのまま舞台化するということをしない
    背景や行間を考え、具体化して組み立てることで上演用台本を作り、その台本に則って上演する
    この上演用台本は「心の中のセリフ」を構成したもの、と言えるかもしれない

    フランス演劇と南インド古典劇、意外な共通点がある

    ムドラは手の形で言葉を表す方法だけれども、声に出す言葉だけでなく、心の中の言葉を表していく方法でもある
    セリフではない部分を極端に深読みして表現しようとする指向性が、ムドラによる表現を発達させたのかもしれない

    2016/08/15 ナヴァラサの練習

    2016/08/16

    月に一度のムドラ研究会
    昨日は、ナヴァラサの練習をしました

    ナヴァラサ(NAVARASA)は、9つの味わいまたは情趣という意味
    ラサについては、インドの芸術に関する古典学問書「ナーティヤシャーストラ」に詳しく述べられています
    インドの芸術表現に欠かせない大切な概念のひとつです

    ⑴シュリンガーラ(Srngara)=恋
    ⑵アドゥブタ(atbhuta)=驚嘆
    ⑶ヴィーラ(Veera)=勇猛
    ⑷ハースヤ(Hasya)=滑稽
    ⑸ラウドラ(Raudra)=忿怒
    ⑹バヤーナカ(Bhayanaka)=恐怖
    ⑺カルナ(Karuna)=悲しみ、慈愛
    ⑻ビーバルサ(Bibatsa)=嫌悪
    以上の八つに、後世の解釈によってシャーンタというラサが加えられて、九つのラサという意味の「ナヴァラサ」と言われます
    シャーンタ(Santha)は平安という意味で、心に何も起きていない状態を指します

    ラサにはそれぞれ対応する感情や心の状態があります
    シュリンガーラは恋情や欲望
    アドゥブタは驚き、感動
    ヴィーラは気力
    ハースヤは笑い
    ラウドラは怒り
    バヤーナカは恐れ
    カルナは悲しみ
    ビーバルサは嫌悪感
    に対応しています
    俳優がこれらの感情を的確に演じることで、観客はラサを味わうことができると考えられています

    クーリヤッタムでは、これらの感情を表現するために、顔と目の表情に重点をおいた基礎訓練をします

    昨日は伝統的なスタイルで、床に座って、腕を組み、八つの感情を一つひとつの感情を順番に練習していきました
    最後に自分の中を見るようにして、シャーンタの状態に身を置き、ナヴァラサを終えました
    このような基礎練習は、何かを覚えたり、一度やって成果が出るものではありません
    何度も繰り返すことで、演技する身体に変容していきます

    ムドラ研究会でも、また時々練習したいですね
     

  • 楽器のこと、リズムのこと、徒然に

    過去のブログから

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    クーリヤッタムの音楽、ミラーヴ

    2020/6/11

    アマヌール・チャーチュ・チャーキャール・スマーラカ・グルクラム
    オンラインレクチャーシリーズ
    ナーティヤサウラバム(演劇の薫り)
    第1回 クーリヤッタムの音楽 (2020/5/27)
    ミラーヴ奏者 カラーマンダラム・ラジーヴ
     
    このレクチャーの内容を大まかに日本語に訳してみました
     
    クーリヤッタムについて聞いたことがある人は多いと思いますが、詳しく知っている人は少ないかもしれない。クーリヤッタムについて、私たちの知識を紹介して、多くの人々により多くの人たちに知っていただきたいと思ってはじめました。
    3:28
    クーリヤッタムはサンスクリット戯曲を上演する演劇です。普通の演劇と違って一つの戯曲を何日もかけて上演します。
    4:26
    ミラーヴは神聖な楽器(deva vadyam)であり、とても清浄なものです。クーリヤッタム、チャーキャールクートゥ、ナンギャールクートゥに使われます。
    ミラーヴは自ら生まれたもの(svayanbhu)です。昔は土から作られていました。今でも儀礼で土から作ったミラーヴを使っている寺院があります。銅を使うようになったのは50年ほど前からではないかと思います。
    5:27
    ケーララカラーマンダラムで1966年にミラーヴコースが始められました。その時指導にあたったのはPadmasri P.K. Nambiar師です。その前にもナンビャールの家系で代々教え伝えられ、素晴らしい演奏者がいたということです。
    カラーマンダラムで私が学んでいた頃は、4年ディプロマコース4年、その後2年の上級コース、さらに2年とありましたが、もう少し長く、10年か11年のコースになっています。
    6:50
    ミラーヴを学ぶ方法は、ガナパティカイから始まってミラーヴオッチャペドゥッタルを教わり、サーダカを何種類か、パータカイ(練習用の手)を教わります。
    次にプラッパードゥのためのゴーシュティと言われる儀礼のための曲を教わります。これにはターラムの人が歌う部分があり、舞台の成功を祈るもので、決まっている手を覚えます。
    次にニティヤクリヤ、これは演技する人も太鼓の人も初舞台で披露する曲です。次にヴィドゥーシャカのクリヤ、そして、クーリヤッタムのチャーリと呼ばれる役柄によって違う歩き方などの決まった手を覚えます。
    アングリーヤンガム、マッタヴィラーサムといった演目の決まっている手も覚えます。
    それらと同時に、クーリヤッタムのアビナヤ(演技)に合わせるための練習もします。チョッリヤッタムといって、演技と伴奏と一緒に練習をします。
    これらの練習とともに、戯曲について学びます。
    また、上演用台本も学ばなければなりません。
    そして、サンスクリット語も学びます。
    クーリヤッタムで使われるターラム(拍子)は、ケーララの他のパーカッションと同じように、エーカターラム(ekatalam)、トリプタターラム(triputatalam)、ドゥルヴァターラム(durvatalam)、チャトゥラシュラトリプタ(chaturashratriputa)、ムルキヤトリプタ(murukiyatriputa)、アダンタターラム(atantatalam)、ラクシュミターラム(Lakshmitalam)などです。
    9:10
    クーリヤッタムでミラーヴを叩くということは、演技の伴奏をするということで、決まっていることを演奏するのではなく、経験を積み重ねることでできるようになります。そしてこれがミラーヴの一番大事な役割です。
    チョッリヤッタムで練習して行くけれども、他の人たちがやっている舞台を、たくさん見てたくさん聞いてようやくできるようになります。
    クーリヤッタムといえば、マノーダルマ(心のままに兵衛んする即興性)やスークシュマアビナヤ(微細な演技)が特徴で、俳優に大きな自由度があります。一つの場面を俳優がやりたいだけ時間をかけて演じることができます、ミラーヴ奏者はずっと伴奏しなければなりません。だから、常に集中しながら座って演奏する必要があるのがクーリヤッタムの音楽です。
     
    11:15
    カタカリでは、歌手が音楽全体の進行を司っていると、私は考えています。クーリヤッタムではその役割を第1ミラーヴ奏者が担っています。彼が音楽の指揮をしていると言ってよいでしょう。もちろん俳優がもっと重要であることは言うまでもありませんが。
     
    12:30
    どの場面でどの拍子で叩かなければならないなどの決まりは、ほとんどありません。
    幕の最後や夕暮れ時のラーガであるシュリーカンティ(srikanthi)の場面ではエーカターラム、また、遠くへ呼びかける時のラーガであるウェーラドゥーリ(veladhuli)の場面ではトリプタターラムのミドルスピードで叩く、などいくつかの決まりはありますが、ミドルスピードといってもどのくらいの速さかなど、きっちりと決められているわけではありません。また、前後の演技によって、必ずしもその通り叩くのがいいとは限りません。
     
    14:00
    クーリヤッタムに使われる楽器類はミラーヴ2台、イダッキャ、クリターラム(フィンガーシンバル)、シャンク(ほら貝)、クルンクラル(ダブルリード)、トッピマッダラム、ティミラ。この中でマッダラムは現在は使われていません。昔使われていたと言うことですが、私は見たことがありません。クルンクラルは特別な時に使われることがあります。ティミラはトリヴァンドラムのマールギで使われています。
    一般的にミラーヴとイダッキャ、クリターラムがクーリヤッタムのオーケストラの基本楽器構成です。
    14:50
    基本の拍子は、舞台上に座ってターラムを叩いているナンギャールアンマが刻んでいます。トリプタターラムならば、7つの拍を彼女たちが刻みます。その倍を刻んでいるのがミラーヴ奏者のうちの一人、これを拍子をとっている、と言いますが、実際には拍子の拍の倍を刻んでいます。そのさらに倍、その倍を刻みながら即興的に演奏していくのがもう一人のミラーヴです。演技に合わせて、音を変えたり、音を大きくしたり、少しスピードを上げたりしながら、即興的に演奏していきます。
    16:20
    私たちには、何周期で終わるなどの決まり手はありません。終わりのフレーズ(kalasam)はあり、またはじめる時はvattattukottukaというフレーズがあります。その間の演奏は全て即興で、今演奏したことは明日は変わってしまいます。これは演技する人にも言えることで、決まったことを演じているのですが、日によって、順番が入れ替わったり、長さが変わったりします。
    17:00
    クーリヤッタムを見たことがある人にとっては、この話を聞いて理解の助けになると思います。見たことがない人にはこれを聞いて、クーリヤッタムに関心を持ってもらえることを願っています。
    17:30
    クーリヤッタムの主要な5作品について話しましょう
    トーラナユッダム、バーリヴァダム、シュールパナカンガム、ダナンジャヤム、タパティサムワラナム
    これらのクーリヤッタムでは、ミラーヴのきっちり決まった曲があるわけではありませんが、それぞれに演出がしっかり決まっている場面があります。このような場面で、ミラーヴの演奏が大活躍します。この5つ以外にもたくさんクーリヤッタムの演目はありますが、今日はこの5つについて話します。
    18:05
    アビシェーカナータカ第3幕トーラナユッダム
    6日間にわたって上演される作品です。この中で庭の護衛であるシャンクカルナという登場人物がいます。シャンクカルナは5日間登場し、様々な演技をするとても重要な役です。最初プラッパードゥ、次の日はニルヴァハナムと言われる回想シーンで、パダプラッパードゥ(padapurappadu)、アランカリピッキャル(alankaripikkayal)、カイラーソーッダラナム(kailasoddharanam)など、非常に力強い場面が出てきます。
    18:45
    音楽についての重要な例としてパダプラッパードゥの話をしましょう。これは議論にもなることですが、パダプラッパードゥはきっちり振り付け可能な場面だということです。構造がきっちり決まっていて、Veerarasa(勇猛な情趣)の場面です。一周する足の運びや、斜めに移動する振り、ジャンプして片膝を伸ばして下がっていくなど、また、馬や象に乗り、剣と盾、槍、弓矢、などの武器を持ったり、しっかりとした身体訓練を必要とします。
    この場面では、周期を決めて演奏するなど、構造を組み立てて演奏する余地があります。俳優と理解しあって作ることができれば、観ていてとても気持ちの良い場面になります。俳優によっては(名前は言わないけれど)拍子にきっちり合わせて美しく動く人がいます。そのように数を合わせて見せることができれば、たぶん、カタカリのアシュタカラーシャム、(この中にもパダプラッパードゥもカイラーソッダラナムもあります)とも比べることができる場面と言っていいのではないでしょうか。
    21:15
    次にカイラーソーッダラム。素晴らしい場面で、クーリヤッタムという芸術の中でもこれほど劇的な表現があるでしょうか。カイラーサ山の大きさを目で見て、よく調べていく場面で、2時間続くこともあります。トリプタで、イダッキャとミラーヴの演奏でできる可能性がものすごく広がっています。私がミラーヴ奏者だから、大袈裟に言っていると思わないでください。震えるほどの感覚を覚えるような場面なのです。カイラーサ山の高さを上へと見て、また下へと見ていくとき、ミラーヴはその意味に合わせて、音を上げたり下げたりします。また拳で山を打つ場面、ここには決まったパターンがあります。山を持ち上げて投げる場面。これらの前に山のを描写する場面(parvatavarnana)があります。ここでは決まったリズムがあります。といっても完全にパターンが決まっているわけではありませんが、いくつかの周期を使って、数を決めて演奏することができます。
    22:30
    カイラーソーッダラムが終わると、次にパールヴァティウィラハムという場面です。前の場面からうって変わって、静かに演奏するパールヴァティとシヴァを一人で代わる代わる演じる場面(pakarnattam)音楽的なです。
    このように素晴らしい場面がたくさんあるトーラナユッダムです。
    23:15
    これが終わって、ラーヴァナの登場、松明を手に持って振る舞う場面です。
    次にハヌマーンが登場します。このようにトーラナユッダムは、演出の決まったたくさんの場面がある演目です。
    (途中映像の途切れあり)
    24:22
    バーリヴァダムは、スグリーヴァの占い(presanamvekkyal)から始まり、一日で上演する特別なクーリヤッタムです。スグリーヴァの占いは、ゆっくりとしたテンポで、静かな部分から始まります。敵がいる、味方はいない、という占いで悲しむ場面、そして、味方はいる、敵はいない、という占いが出て喜び、孔雀の舞があります。そしてラーマとラクシュマナに出会い、バーリの登場へと続きます。静かな場面からはじまって、だんだんと上がっていって、バーリの登場、乳海撹拌、ナラシンハの場面、演奏が盛り上がるところです。とてもパーカッシヴな可能性があると言えます。
    24:48
    シュールパナカンガムは戯曲が大きな意味を持つ演劇です。静かなシュリーラーマのシュリンガーラ(恋の情趣)の場面、それからラリタが出てきて、ラーマに対する恋心、シータに対する嫉妬、怒りを表すトゥリバーヴァと呼ばれるとても有名な場面があります。多分クーリヤッタムの女性の役でもっとも重要な場面、と言われるところです。音楽もとても大事で、伴奏するのが楽しい場面です。この中では、シュリーラーマとラリタの会話で、考えるところ、相手の問いに答えるところ、独白など、戯曲の通りの言葉のやりとりが多く、伴奏もそれに合わせて、音を少し大きくしたり、弱くしたり、注意深く演奏しなければなりません。この後、シュールパナカが登場して、話が進んでいき、最後の場面ではシュリーカンティと呼ばれるラーガで朗誦される部分があります。nenamと言われる血まみれの出来事が終わって、ゆっくりとしたエーカターラムの演奏とともに、とても穏やかに舞台が終わります。この場面はシュリーカンティの情感を味わえる最も良い例だと、私は思います。
    28:00
    ダナンジャヤムと、タパティサンワラナムの二つのクーリヤッタムは、シュリンガーラが大事です。特にチャヤクーラヤム(chayakulayam)、シキニシャラバム(sikhinisharabham)などの場面はとても有名です。最初に話した、トーラナユッダムのシャンクカルナのアランカリピッキャルと同じ場面が出てきます。シチュエーションは違うけれども同じやり方で、ここではとても美しく演じられます。ミラーヴの可能性を最大に活かせるところです。
    ダナンジャヤムのシキニシャラバムでは目だけで演じるところがあり、アショーカワニカーンガムのパーナードゥルパムも目の動きだけで演じるところがあります。ミラーヴ奏者は役者の真後ろに座っています。衣装をつけた状態で、場所を変えずに演技するときにはムドラを見るのも難しいのです。台本や戯曲のよく知り、また経験の積み重ねによってできるようになります。
    この場面では4つの場景があり、初めは目だけで表します。羽虫たちが火の中に落ちても燃えない。次に鹿の子が雌トラの乳を飲んでいる。像の子供がライオンの牙を引っ張っている。同じように、ヘビの子供がマングースを舐めて眠らせている。このように驚くべき光景を見ているアルジュナが見てそれを演じる場面です。これはアシュラムの描写の場面として演じられることもあります。
    30:20
    この目の動きで表現する場面は、伴奏がとても難しいのです。叩きはじめて、頭の動きや冠の小さな動きに注意を払わなければ何をしているがわかりません。しかし俳優が音を聞きながらそれに合わせて演じることで、他の芸術にはないような演技表現となるのです。目だけで演じるところは、ムドラを使うことができません。だから、ミラーヴ奏者が想像できるように表現しなければなりません。これがうまくいくと、とても素晴らしい出来事になります。
    31:20
    ほんの少ししか紹介できませんでしたが、他にもたくさんあります。アショーカワニカーンガム(asokavanikangam)のヒマカラム(himakaram)、パーナードゥルパム(panadrupam)、ウディヤーナプラヴェーシャム(udyanapravesam)、新しい作品では、ヴェーヌさんのシャクンタラー姫(shakuntalam)で、ブラマラパータという場面で、特に音楽的な演出をしています。蜂の飛ぶ様子を目で表すところで、ドゥシャンタとシャクンタラーが交互に表現するところがあります。また、漁師が魚をとる場面もあります。このようにミラーヴの演奏者の手によって、演技と一緒に進むときにできることがあります。
    32:15
    他にもたくさんあります。ジャターユヴァダム(jatayuvadham)のジャターユの舞、ラクシュミターラムを使います。これは非常にきっちり組み立てられたリズムパターンです。ユッダチャーリ(yuddhachari)は演奏家がみんな好きなリズムです。私がケーララカラーマンダラムで学んでいたときに、ユッダチャーリを始めると、みんなが聞きに来たものです。カタカリでも戦いの場面で演奏するリズムには何か特別に魅力がありますね。
    このようにたくさんの体系化されたリズムパターンがあります。
    クーリヤッタムの伴奏だけではなく、ミラーヴによるターヤンバカ、ミラーヴによるメーラム、他の演劇に参加するなど、ミラーヴが活躍できない分野はないと言えます。
    34:40
    ミラーヴが演技を操っているように見えると言われることがあるけれど、それは俳優の力があってこそで、俳優が演技して初めて、演奏者は演奏できるのです。演奏や音だけだったらミラーヴの役割は果たせません。優れた演技者、俳優が演じて、その伴奏をすることによってできることです。
    35:28
    アマヌールグルクラムは、みなさんご存知のように、クーリヤッタムをグルクラシステムで訓練している機関で、37年になります。ケーララの主要な機関の一つで、パドマブーシャン・グル・アマヌール・マーダヴァ・チャーキヤール先生と、有名な俳優で、著作家でもあるヴェーヌさん、の二人ではじめました。
    アマヌール先生がクーリヤッタム界に残した功績といえば、クッタンチャーキヤールや、マドゥエタン、ウシャチェーチをはじめとした弟子たち、そしてこの教育機関です。
    今、顔を合わせて、舞台上塩素することもできず、オンラインであっても、完全な形でお届けすることはできないので、私たちの知っていることをみなさんと共有できたら、と思っています。
    月に5回このナーティヤサウラバムで、クーリヤッタムやその伝統に関するお話をしていく予定です。
    みなさん、私の経験、話を聞いていただけて、光栄です。ナマスカーラム
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    Mizhavu

    2017/01/17

    「ミラーヴ」という楽器はクーリヤッタムに欠かせない太鼓です
    ”Deva Vadya(神の楽器)”と呼ばれ、普通の楽器とは違うと考えられています
    伝統的には、寺院劇場クータンバラムの中に置かれ、クーリヤッタムやクートゥなどが上演される時だけ鳴らされるものでした
    一度楽器が作られると、人間の通過儀礼のように、産まれた儀礼や、成人儀礼などを行ないます
    使われなくなれば、葬儀を行なって土に埋めたそうです
    このように儀礼を行なった太鼓は、寺院の外に持ち出されることもなく、常に皮を張った形で、クータンバラムに置かれなくてはならないそうです
    イリンジャラクダのお寺のクータンバラムでも、いつも大きなミラーヴが鎮座しています
    壷の形をした大きな胴は銅製です。昔は陶器製でした
    20世紀後半、寺院の外でも公演されるようになって、現在は銅製が主流になりました
    ミラーヴの胴は、人間の首から腰までに対応しているそうで、首から音が出るようになっています
    また、胴には「耳」と呼ばれる小さな穴があります
    首の先は直径20cm程度の円形になっていて、そこに牛皮を張って素手でたたきます
    クーリヤッタムでは、最初にこの太鼓が鳴り響くと、開演の知らせとなり、劇を観るために、天界、地上,地下界から神々をはじめとして様々なものたちが集まってくるといわれています
    演劇の伴奏のために発達した楽器で、繊細な感情の機微を表すことも、非常に荒々しい強さを表すこともできる楽器です
    近年ではミラーヴを使った太鼓だけの合奏も盛んになっています
    ケーララのパーカッションアンサンブルは、ゆっくりはじまって徐々に拍の間が詰まっていくスタイルが多く、1時間くらい叩き続けるのは普通です
    月末のライブでは、30分くらい、ミラーヴデュオで演奏する予定です

    ケーララパーカッションの魅力

    2017/01/26

    ケーララにはには色々な種類のパーカッションアンサンブルがあって、使われる楽器も様々ですが
    拍を刻む人がやたらにたくさんいるというのは特徴のひとつ

    10人で演奏していても、9人は拍を刻んでいて、細かいリズムを演奏するのはひとりだったりする

    最初はゆっくりはじまり、拍の間隔がたっぷりあって、多勢の男たちがその拍に集中して太鼓を打ちこむ

    時間をかけて、その拍が間近になっていくと
    聴いている者たちも、その拍の波に巻き込まれずにはいられません


    今度のムリウイでのミラーヴライヴでは、楽器は一種類、演奏者も女性二人だけなので、本場の雰囲気からはほど遠いのですが

    大きな拍から、だんだんと間がつまって盛り上がる感覚を、自分達なりに楽しめたらいいな、と思っております

    おつきあい頂ければうれしく思います(irino)

    クーリヤッタムのあいさつ

    2016/02/15

    リズムのフレーズを口で言うための言葉のようなものを、ケーララの言葉でvaithari(ワイターリ)という

    演技の練習でも、リズムが決まっている部分は、このワイターリと一緒に振りを覚えて、口で言いながら練習する

    どんな演目でも最初に出てくるのは、abhivadyamと言われるあいさつの動き

    rhyakkim dhaku kku kku kkum
    rhyakkim dhaku kku kku kkum
    rhyakkim dhaku kku kku kkum
    tha tharha tharhim

    両手を両耳の横で動かし
    その後腕をクロスして胸の前に下ろす
    この動作を右、左、正面に向かって行う
    胸の前で最後に両手のひらを合わせて、ひと回し

    こんな風に言われても、見たことのない人には、具体的な動きが想像できないかもしれない


    rhyakkim
    tharhim
    などは、ミラーヴ特有のワイターリだと思う
    たしかに、ミラーヴの音を聞くと、そういう風に聞こえるから面白い

    けれども、そういう風に演奏できるようになるまでは結構大変だとも感じる

     

    参考動画:ゴーヴァルダナ山を持ち上げるクリシュナ
    1分25秒くらいからabhivadyam

     

  • Dogs in Kerala

    2018 戌年にちなんで 犬 そして他の生き物たち

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    Taro at Natanakairali

    メスだけどタロー

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    at Chathakudam

    お寺の前の広場でいつも寝ている

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    at Chathakudam

    朝から休憩している

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    at Chathakudam

    象の落とし文とともに

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    on the street in Irinjalakuda

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    on the street in Irinjalakuda

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    on the street in Irinjalakuda

    なんだか黄昏ている

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    on the street in Irinjalakuda

    朝の出勤

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    on the street in Irinjalakuda

    朝の出勤 その2

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    on the street in Irinjalakuda

    何を考えているの

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    on the street in Irinjalakuda

    熟睡

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    at Mizhavukarali

    lovable cats

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    in Irinjalakuda

    子猫

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    on the street in Irinjalakuda

    猫=Poocha

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    in Fort kochi

    さらに猫です

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    at Chakyar Madhom

    おまけ:かめ=aama

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    at Natanakairali

    おまけ:カラスじゃないよ、たぶんuppan

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    at Cochin airport

    もはや生き物でもない

    実物大プーラムの象の像

  • Links

    2016年発表会の様子

    入野智江の父である故入野義朗は現代音楽の作曲家でした。母・礼子は音楽教育者として子供たちに西洋音楽の基礎を教えながら、ロシア、ドイツなどいろいろな国や地域との音楽を通じての交流に力を入れています。二人が創設した音楽研究所は現在、音楽の基礎教育とともに、来日した各国現代音楽家たちのレクチャーを行うなど、知る人ぞ知る現代音楽の情報発信地となっています。
    インド古典劇の演技法と、ミラーヴ、ムリダンガムなどの太鼓の演奏法のクラスを開講しています。

    東京楽竹団のオリジナル竹楽器

    以前、「横浜ボートシアター」の音楽を担当していた矢吹誠氏が芝居の中で使うために開発した竹の楽器「竹マリンバ」を中心に、竹で作ったオリジナル打楽器と尺八などの日本の管楽器などで音楽を演奏しているグループです。

    「バンブーオーケストラ」でともに演奏してきた仲間たちとともに、2008年「東京楽竹団」を旗揚げしました。
    東京の高尾を拠点に、コンサートや竹の楽器作りワークショップなどの活動をしています。2007〜2008年には竹楽器を持ってインド・ケーララに行き演奏や交流もしました。